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第4話 細胞の中でも若くてとても元気な細胞(肝細胞)

60兆個の細胞でできている私たちのからだ。でも、はじめはお母さんのおなかの中にあるひとつの細胞(受精卵)です。このひとつの細胞が、何回も細胞分裂して私たちのからだとなります。このことは、どんな生物でも同じです。生物のからだは、ひとつの細胞から始まるとっても多様な細胞たちの固まりなのです。

幹細胞

前回のお話の中で、それぞれの細胞が役割を持つということを「分化」としてお話ししました。ひとつの細胞が、細胞分裂や分化を繰り返し、さまざまな細胞集団であるからだのパーツを作っています。その際、似たような臓器や組織はそれを作るひとくくりの集団として、1種類の細胞がもとになってできていきます。たとえば、骨と軟骨、筋肉や靱帯(じんたい)はおおかた1種類の細胞から始まっていますし、赤血球や白血球など血液を構成している細胞たちも同じようにもとの細胞は共通です。そこで、このようなひとかたまりの集団を作り出すもとになる細胞を「幹細胞(かんさいぼう)」と呼ぶようになりました。「幹」とは、きっと枝が分かれる前の木の幹といった意味でしょう。

ひとくくりに幹細胞といっても、いくつかの種類があります。たとえば、骨や軟骨、筋肉などのグループを作り出すのも、ひとつの幹細胞として間葉系(かんようけい)幹細胞と呼ばれていますし、血液の細胞たちを作り出すのもひとつの幹細胞として造血(ぞうけつ)幹細胞といっています。

多分化能さて、ここで幹細胞とはどのような細胞かをおさらいしてみましょう。幹細胞の一般的な定義として次のふたつのことがらがあげられています。ひとつめは、自分自身と同じものを作り出す能力を持っていること(自己複製能)、ふたつめは、異なる種類の細胞に分化する能力を持っていること(多分化能)です。先ほどお話ししました、骨や軟骨になる幹細胞は、もちろんその幹細胞として、自分自身を複製する能力を持っていますし、少なくとも骨や軟骨といった別々の組織や細胞を作り出す能力を持った細胞といえます。血液の幹細胞もこれと同じで、自分自身でも増えていきますし、白血球や赤血球を作り出すもととなっています。自己複製能と多分化能を持っているのです。

受精卵はそれ自体とても多くの組織(人間の持つすべての組織)の細胞に分化する能力を持っていますが、それ自身が自己複製能を持っているとはいえません。お母さんのおなかの中で成長するために細胞分裂が始まると、それは受精卵そのものではなくなります。自己複製とはいえません(もし自己複製していたら赤ちゃんがたくさん生まれてしまうことになるかもしれませんが)。そのため、受精卵をうまく変化させ、培養できる細胞として増やすことで、受精卵と同じような機能を持った細胞が作られてきました。皆さんも聞いたことがあるかもしれませんが、これが胚性幹細胞(ES細胞)と呼ばれるものです。このES細胞は他の幹細胞と同じように自分自身を作り出す能力が備わっていますし、他の幹細胞と比べてはるかに多くの組織や臓器になる能力も持っています。実際にはその動物や人間自体を作り出すことができるために、その取り扱いには倫理的な問題を避けて通ることができませんが。
もちろん、私たちのからだの中にはES細胞に相当する幹細胞は備わっていません。しかし、骨を作ったりするものや、血液を作ったりするものや、皮膚を作ったりするものたちは、大人のからだの中に生きています。もちろん、生まれたばかりの赤ちゃんや、子供たちの方がこういった幹細胞の数や比率ははるかに多いのですが、大人のからだの中にもしっかりと残っています。こういった幹細胞たちを上手に増やすことによって、からだの組織に相当するものを作り出す技術がどんどん進歩しています。再生医療には、このように幹細胞を増やしたり、維持したり、分化の方向に誘導させたりする技術が不可欠なのです。

第5話 「マトリックスという骨組みがあってこそ細胞が存在できる」

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