HOME >> 再生医療のおはなし >> 第5話

このページを印刷

第5話 マトリックスという骨組みがあってこそ細胞が存在できる

私たちのからだが、約60兆個の細胞でできているということは前回までにお話ししてきました。このたくさんの細胞たちがそれぞれ適切に分化して、からだの一部としての役割を果たしています。そう、生物のからだはこうした細胞たちでできています。では、私たちのからだすべてが細胞でみたされているのでしょうか。どうもそうではなさそうです。今回はマトリックスという私たちのからだを作る上でとても重要な物質のお話をします。

ところで、前回までにお話ししたことをもとに、たくさんの細胞たちがからだをどのように作っているか想像してみてください。細胞ひとつひとつはまるで微生物のように生きていますが、それらがかたまりを作って、からだの部分を作っているような感じです。ごちゃごちゃではないにしろ、ひとかたまりとして集まっているようです。細胞がお互いに手をつなぎあって(くっつきあって)かたまりを作っているようです。しかし、実際にはそのような構造にはなっていません。そこに登場するのがマトリックスという物質です。

マトリックスマトリックスとは(どこかの映画で聞いたような言葉でしょうが、これに見合う日本語はなく、カタカナでこの言葉を使っています)、私たちのからだにはとても重要な物質です。というのも、からだの中の細胞は、マトリックス(細胞の外にあるので細胞外マトリックスとも呼ばれています)とよばれる「物質」の骨組みの中にはまりこむ形で存在しているからです。それはあたかも、マトリックスとよばれるスポンジの穴の中に細胞が入り込んで生きているかのようです。

骨からだの部分によって、マトリックスの種類はいろいろなものがあります。たとえば、骨はカルシウムという物質を中心にできている堅いマトリックスに骨を作る細胞がはまりこんでいます。もともと、このマトリックスは骨を作る細胞たちが作り出したものなのですが、かれらは自分で堅いマトリックスを作り出し、その中に住んでいるかのようです。だから、私たちはカルシウムをしっかりとらないと、骨が弱くなってしまうなどと言われます。また、皮膚(特に真皮と呼ばれる少し深い部分)はみなさんになじみ深いマトリックスが登場します。コラーゲンです。皮膚の大部分は、このコラーゲンに、線維芽細胞(せんいがさいぼう)と呼ばれる細胞がはまりこんでいます。この場合も繊維芽細胞がコラーゲンを作り出し、そこをすみかとしているようです。サプリなんかで「お肌のケアにコラーゲン配合の・・・」などと言っているのを聞いたことがあるかもしれません。このコラーゲンにはたくさんの種類があり、皮膚以外にも私たちのからだを作る上ではとても重要なマトリックスとなる物質です。

からだもちろんマトリックスは細胞とちがってそれ自体が生きているわけではありません。タンパク質や無機質といった物質です。しかし、細胞がそこで活動をする際にとても重要な場所を提供し、私たちのからだを作る上ではなくてはならないものなのです。細胞たちは自分の生きる場所としてこういった場所を自ら作り、そこで生きています。マトリックスを作って生きているのです。

第6話 「臓器移植について考える」

このページのトップへ