自家培養口腔粘膜上皮

自家培養口腔粘膜上皮とは

自家培養口腔粘膜上皮は、角膜上皮幹細胞疲弊症の治療を目的とした製品で、同疾患に対する口腔粘膜上皮細胞を用いた再生医療等製品としては世界初です。本品は、大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))の西田幸二教授が開発した技術を導入して実用化した国産の製品となります。眼科領域では、2020年3月に製造販売承認を取得した自家培養角膜上皮につづき、国内第2号の再生医療等製品です。
自家培養口腔粘膜上皮は、患者さま自身の口腔粘膜組織を採取し、分離した細胞を培養して作製するヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シートです。患者さまの眼表面に本品を移植することにより、患者さま自身の口腔粘膜上皮細胞が生着・上皮化し、欠損した角膜上皮を修復することを目的としています。自家培養口腔粘膜上皮は、角膜上皮幹細胞疲弊症によって両眼の角膜が広範囲に障害を受け、視力が著しく低下した患者さまに対する新たな治療法として期待されています。

自家培養口腔粘膜上皮

開発の経緯

本品の開発において、大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))の西田幸二教授、大家義則講師らにより、AMED1)からの支援を受けて、医師主導治験が実施されました。当社は、西田幸二教授が世界に先駆けて開発した自家培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の技術を導入するとともに、当該医師主導治験を引き継ぎ、2016年9月より企業治験を行ってきました。J-TECは、2020年9月に国に製造販売承認申請を行い、2021年6月に製造販売承認を取得しました。

1)国立研究開発法人日本医療研究開発機構

実用化について

自家培養口腔粘膜上皮は、2021年6月、眼科領域では第2号となる再生医療等製品として、角膜上皮幹細胞疲弊症を対象に国から承認されました。更に、2021年12月より保険が適用されています。

日本における再生医療は、2014年11月に「医薬品医療機器等法」ならびに「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行されたことをきっかけとして、製品開発、臨床応用がスピードアップしています。

開発者インタビュー

大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))教授 西田 幸二 先生
Kohji Nishida, M.D., Ph.D.
  • 自家培養口腔粘膜上皮およびiPS細胞を用いた培養角膜上皮等の開発者
  • 眼科における再生医療の世界的権威
  • 専門は脳神経感覚器外科学(眼科学)、再生医療
  • 大阪大学大学院医学系研究科(脳神経感覚器外科学(眼科学))、日本

角膜上皮幹細胞疲弊症に対する治療法として、亡くなった方の角膜をいただいて患者さんに移植する角膜移植が従来行われてきました。しかしながら拒絶反応や感染性角膜炎といった術後合併症のため長期成績が極めて不良である事や、深刻なドナー不足のために治療を必要とする患者さんの治療を十分に行えないことが問題となってきました。
そこで我々は、患者さん自身の口腔粘膜上皮を採取して温度応答性培養皿上で培養して培養口腔粘膜上皮細胞シートを作製し、患者さんの角膜に移植する治療を開発しました。この治療法は拒絶反応はなく従来の治療法よりも有効で安全と考えられ、眼科領域の再生医療が広く普及することが期待されます。
J-TECには、組織採取、細胞シート移植、術後管理など一連のケアを医師が適切に行うことができることができるように普及啓発活動に努めることを期待しています。