コラム・トピックス

2024年05月23日【ピックアップ】

自家培養軟骨に関する論文が掲載されました

亀田総合病院 加藤 有紀 医師らによる自家培養軟骨ジャック®固定法の違いにおける比較試験について

加藤医師らは、自家培養軟骨移植における培養軟骨の固定法として、自家骨膜群とコラーゲン膜群に分けた臨床結果の比較研究を行いました。本研究は、自家培養軟骨の固定法として、骨膜の代替品であるコラーゲン膜の有効性調査を目的に実施されました。研究概要としては、膝に4㎠以上の軟骨欠損がある69人の患者(離断性骨軟骨炎もしくは外傷性軟骨欠損症)に対して、自家培養軟骨を骨膜もしくはコラーゲン膜で固定して移植した2群の臨床結果比較試験です(骨膜群:34人、コラーゲン膜群:35人)。この度、本報告が『Scientific Reports』に掲載されましたのでご紹介します。なお、コラーゲン膜を用いたジャック®の臨床成績としては初めての報告です。

評価方法

  • 術後3、6、9、12、18、24か月ごとの患者自身が評価したスコア(IKDCスコア、Lysholmスコア、KOOS※1
  • 術後1年の関節鏡検査によるICRS CRA※2スコア

※1 IKDC: International Knee DocumentationCommittee score, Lysholm score, KOOS: Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score
※2 ICRS: International Cartilage Repair Society

報告内容

  • 骨膜群とコラーゲン膜群の両群ともに術前より術後2年での臨床成績が改善
  • 骨膜群とコラーゲン膜群の術後2年での臨床成績に有意差なし
  • 骨膜群と比較してコラーゲン膜群で有害事象の発生が少ない
  • 骨膜群と比較してコラーゲン膜群は術後1年の経過(セカンドルック)でのICRS CRAスコアが有意に高い 

本結果より加藤医師らは、自家培養軟骨移植術において、骨膜で固定した自家培養軟骨治療よりもコラーゲン膜による自家培養軟骨治療の方が有効であると結論づけています。2群間の臨床結果には有意差はないものの、術後1年での関節鏡検査におけるICRS CRAスコアはコラーゲン膜群で有意に高く、有害事象発生率は低かったとしています。


自家培養軟骨は、2012年7月に、整形外科領域では国内初となる再生医療等製品として、膝関節の外傷性軟骨欠損症と離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)を対象に国から承認され、2013年4月より公的保険が適用されています。

また、製造販売承認取得後から 7 年間にわたり自家培養軟骨を使用した全症例を対象とする使用成績調査結果を取りまとめて 2019 年 10 月に再審査申請した結果、厚生労働省によりジャックの承認時の安全性、有効性が改めて確認され、【効能、効果又は性能】に変更なく 2022 年 6 月に承認されています。2019 年には自家培養軟骨を用いた治療の患者さんへの更なる侵襲低減を目的として、移植部を覆う方法を、患者さんの脛骨から採取する骨膜から人工のコラーゲン膜に変更し、患者さんへの身体的負担の軽減と医師の移植手技の簡便化を実現しました。

当社では、より広い患者さんの膝治療に貢献すべく、上記疾患に加え、自家培養軟骨の変形性膝関節症を対象とした治験を実施しています。治験は計画通り進んでおり、最終症例の治療が終了し、全例の経過観察を完了、製造販売申請に向けて準備中です。

当社は、今後もより多くの患者さんに自家培養軟骨をお届けできるよう、変形性膝関節症への適応拡大を目指すとともに、引き続き、既存製品のさらなる普及に加え、患者さんの生活の質(QOL)の向上に貢献していきます。

亀田総合病院 スポーツ医学科のホームページ:

https://medical.kameda.com/general/medi_services/index_63.html

自家培養軟骨移植術の特徴(再生医療ナビ):

https://saisei-navi.com/hiza/cartilage_treatment/feature/

論文情報

掲載誌 Scientific Reports
タイトル

Comparative study on clinical outcomes in autologous chondrocyte implantation
sing three-dimensional cultured JACC® with collagen versus periosteum coverings

著 者
  • Department of Sports Medicine, Kameda Medical Center, 929 Higashi-Cho, Kamogawa City, Chiba Prefecture, 296-8602, Japan. 
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