コラム・トピックス

2022年09月26日【再生医療★インサイド】

私たちの強みを考える

畠社長

先日、ある方から、「貴社が、患者さんご自身の細胞を用いた再生医療で成功されている理由は何ですか。」とのご質問をいただきました。即座に、「いえいえ、企業として十分な利益を上げておりませんので、まだ成功はしておりませんよ。」とご回答させていただきました。とはいえ、ご質問してくださった方は、すでに2000例を超える患者さんに再生医療等製品を安定的にご提供させていただいている事実に関心を持っておられたようでした。

患者さんご自身の細胞による再生医療は何が難しいのか

あらためて、当社が実施してきた再生医療について、先のご質問になぞらえて考えてみましょう。取り扱っている製品は、再生医療等製品として厚生労働省から承認をいただいているものです。医薬品医療機器等法というルールに従った文書や記録類の整備が必要です。そして、通常の医薬品や医療機器とは異なり、患者さんご自身の細胞自体が製品です。完全なオーダーメイドであるため患者さんの細胞ごとのばらつきがあります。均一ではない細胞を一定の規格を満たす製品につくりあげるには、経験とノウハウが必要です。また、大やけどなどは、突然、患者さんに当社製品の必要性が生じ、医療機関の先生方から注文をいただきます。受注を予測(計画)するのが難しい一方で、細胞培養に使う培養液や培養に供するシャーレなど、あらかじめ一定の個数を準備しておかないと、急な注文に間に合いません。さらには患者さんごとに違う細胞は思うように増えないこともあります。予定通り細胞が増えなかった場合には、その対処法も準備が必要です。2000例を超える患者さんに製品を提供するということは、患者さん一人一人におけるこれら一連の対応を、先生方との窓口になっている営業部門から、生産計画をその都度立案する部門、実際に細胞培養し製造する部門、品質検査をする部門、そして、またこの製品を医療機関にお届けする部門、さらには、こうした一連の活動を監視する部門。こういったすべての部門が連携をとって、このオーダーメイド製品の安定供給を実現しているのです。

すべてを自前で

もとより、私たちは、この事業を開始した時からすべてを自前で作ることを決めてきました。小規模なベンチャー企業として立ち上がったために、あくまでも研究開発型ベンチャーという道はあったでしょう。しかし、このような複雑でオリジナリティーを持った製品を提供する仕組みはこれまで前例がありません。患者さんご自身の細胞による再生医療等製品をお届けするということの難しさは、これまでなかったビジネスモデルを独自に作り上げることにあります。当社は、その実現のためにすべてを自前でやってきました。結果的には、これが私たちの強みを生み出しているのだと思います。冒頭にご紹介したご質問のように、もし、将来私たちがこの領域で成功できるとしたら、この医薬品でもなく、医療機器とも合わない再生医療等製品を提供する仕組みを、従前の製品に影響されることなく、すべて自前でつくってきたことによるのかもしれません。
現在、私たちの作った仕組みをさらに高性能化すべく、徐々に機械化・自動化を開始しています。着実にITの導入を行っています。開発経費の一部をこれに充てています。私たちしかできない経験をもとに、したたかにかつ合理的に新たな仕組みを作っています。こういったことに挑戦できることも、私たちの強みなのかもしれませんね。

2022年9月26日