自家培養口腔粘膜上皮とは

自家培養口腔粘膜上皮は、患者自身の口腔粘膜組織から分離した細胞を培養して製造する口腔粘膜上皮細胞シートです。

大阪大学の西田教授より導入した技術をもとに製品化しました。2003年〜2004年に西田教授らは両眼性の角膜上皮幹細胞疲弊症(Limbal Stem Cell Deficiency (LSCD))を含む難治性の角膜上皮疾患に対して、患者由来の口腔粘膜組織から当該技術を用いて作製した自家培養口腔粘膜上皮を臨床応用し、良好な結果を報告しました1)
大阪大学は、本技術の製品化を目指し、「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シートCOMET01の多施設共同医師主導治験」を実施しました。当社は、当該治験において治験製品の製造を担当した後、大阪大学より本技術の導出を受け、本品の開発に着手しました。

  1. 1) Nishida K, Yamato M, Hayashida Y et al:Corneal reconstruction with tissue-engineered cell sheets composed of autologous oral mucosal epithelium. N Engl J Med 351:1187-1196(2004)

自家培養口腔粘膜上皮の移植フロー

角膜上皮の役割

ヒト眼球の表面は角膜と結膜からなり、角膜は透明で血管がなく、層構造を示します。その最外層の角膜上皮は、角膜上皮細胞からなり、外界から細菌や化学物質の侵入を防ぎ角膜内層を保護する役割を有しています。角膜と結膜の境界である角膜輪部には角膜上皮幹細胞が存在し、角膜上皮細胞を供給するとともに結膜上皮細胞の侵入を阻み、角膜上皮の透明性を維持する重要な役割を担っています。

ヒト角膜の構造

角膜上皮幹細胞疲弊症とは

通常、角膜が傷害され角膜上皮が失われると、角膜輪部から補給された角膜上皮細胞が増殖し、伸展することによって速やかに治癒に至ります。しかしながら、熱傷・化学傷等により角膜輪部を含む広い領域の角膜上皮が失われると、周囲の結膜が侵入して角膜表面が結膜上皮細胞で覆われます。この結膜の侵入により、血管侵入と慢性的な炎症を伴う瘢痕状態となり、最終的に角膜上皮が混濁して視力が低下します。このような病態を総称してLSCDと呼びます。

LSCDに対する既存の治療法としては、患者自身(自家)又は他人(同種)の健常眼から採取した角膜輪部を、患眼に移植する角膜輪部移植があります。しかしながら、自家角膜輪部移植は、健常眼からの広範な角膜輪部(角膜輪部の約30〜40%)の採取が必要なため侵襲性が高く、また、同種角膜輪部移植は、長期的な免疫抑制が必要である上、ドナーも不足しています。また、LSCDに対して羊膜移植が行われる場合がありますが、角膜輪部移植に対する補足的な併用療法であり、患眼に角膜上皮幹細胞が残存している必要があります。

2020年3月に製造販売承認された再生医療等製品「ネピック®」は、患者さま※の移植する眼の対側眼より採取した健常な角膜輪部組織から分離した細胞を培養して製造する自家培養角膜上皮です。自家角膜輪部移植と比較して採取する角膜輪部がはるかに少なくて済み、同種角膜輪部移植のような免疫拒絶やドナー不足の問題がありません。但し、採取可能な角膜輪部(炎症、感染等がないことが確認でき、結膜化がないことが確認できる部位)が残存していない患者さまには適用できません。

スティーヴンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡、移植片対宿主病、無虹彩症等の先天的に角膜上皮幹細胞に形成異常を来す疾患、再発翼状片及び特発性のLSCD の患者さまを除く。

2021年6月に製造販売承認を受けた自家培養口腔粘膜上皮「オキュラル®」の適応は原疾患に制限がなく、すべての重症なLSCDの患者さまに治療法を提供できることが期待されています。

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