保険適用の治療:あざ(母斑)の治療

自家培養表皮によるあざ(先天性巨大色素性母斑)の治療は、2016年12月1日より保険適用となっています。

先天性巨大色素性母斑とは

母斑は黒褐色のあざで、ほくろのような小さなものから、巨大なものまで大きさがさまざまあり、黒い色素を持つメラノサイトという細胞が皮膚の真皮と表皮の境目や真皮の中にたまっていくことであざとなります。

その中でも先天性巨大色素性母斑は生まれつき存在し、体幹、手足、頭などにあらわれます。成人では直径20㎝以上、幼児では体幹は6㎝以上、頭は9㎝以上のあざをいいます。先天性巨大色素性母斑は、成長とともに治ることはなく、将来的に悪性黒色腫(皮膚がん)を発症する恐れ(日本では3%程度)があります。
この悪性黒色腫はその半数が3歳までに発症するといわれており、その患部を早期に切り取ることが望まれます。

皮膚の構造

治療方法

先天性巨大色素性母斑の治療方法はいくつかあり、以下の方法を組み合わせて治療します。

自家培養表皮(表皮細胞シート)を用いた方法

患者自身の健康な皮膚の一部を切り取り、特定の施設で培養し表皮細胞シートを作製します。あざを取り除いた後の傷を表皮細胞シートで覆って、数週間から数か月かけて傷をふさぎます。
この表皮細胞シートは1975年に米国で開発された技術で、日本では2009年より広範囲のやけど患者に公的医療保険で使用されています。

皮膚の構造

レーザー治療

ルビーレーザー、Qスイッチ・ルビーレーザー、Qスイッチ・アレキサンダーレーザーなどのレーザー光線を皮膚にあてて複数回治療します。ただし、レーザーをあてても皮膚の中の母斑細胞(あざの原因であるメラノサイト)は残るため、完全に色をなくすことは難しいとされています。

切除縫縮法

紡錘形にあざを切り取って縫い合わせる方法です。

分割切除法

あざが大きい場合に、2、3回に分けて少しずつ切り取って縫い寄せる方法です。

植皮術

更にあざが大きく、分割切除法では治療ができない場合、周囲のあざのない皮膚を切り取って移動(局所皮弁)して傷をふさぎます。

ダーマトームや掻把(そうは)術を用いる方法

あざの表層を剥がし、傷が治るのを待つ方法です。

組織拡張器(エキスパンダー)を用いる方法

シリコンでできた袋をあざ周囲の皮下に埋めて、皮膚を伸ばし、あざを切り取った後に、その周囲のあざのない伸びた皮膚を用いて傷をふさぐ方法です。

Q&A よくある質問

表皮細胞シートによる先天性巨大色素性母斑の治療に保険はききますか?

自家培養表皮は、広範囲のやけど患者に限り、公的医療保険の適用となっていましたが、2016年12月1日より先天性巨大色素性母斑の治療も適用となりました。

表皮細胞シートによる先天性巨大色素性母斑の治療はどこで受けられますか?
全国の医療機関で受けられます。ただ、表皮細胞シートによる先天性巨大色素性母斑の治療を行うかどうかは 医師・医療機関の判断となりますので、お近くの専門医(形成外科医)にご相談ください。
治療費用はどの程度かかるのでしょうか?

この表皮細胞シートを用いた治療は高額療養費制度の対象となります。患者の自己負担額は、所得にもよりますが、月額6~25万円程度(2015年3月末日現在)とされています。高額療養費制度の詳細については、下記厚生労働省のホームページをご覧ください。

更にお子さんの場合には、こども医療費助成制度もあります。詳しくはお住いの地方自治体の窓口にお問い合わせください。

表皮細胞シートによる先天性巨大色素性母斑の治療の結果を教えてください。
本治療は治験(8例)という臨床試験が複数の病院で行われ、その結果を国が審査した結果、2016年9月に製造販売承認されています。治験の結果、表皮細胞シートを用いたすべての症例であざを切り取った後の傷がふさがり、有効であったと評価されました。表皮細胞シートを用いたことによる有害事象も発生しませんでした。

皮膚の再生医療については、「再生医療ナビ」もご覧ください。