再生医療のおはなし

分化とは細胞が
それぞれの役割を持つこと

私たちのからだの細胞はそれぞれ、いろいろな役割を持って働いています。最初は、お母さんのおなかの中にあった1個の細胞から、驚くほどたくさんの機能を持った細胞たちができあがっていきます。 「細胞分裂」という言葉は、みなさんも一度は聞いたことがあるでしょう。文字通り1つの細胞が2つに分かれ、数が増えることです。では、細胞の「分化」という言葉はどうでしょう。「分裂」という言葉とくらべると、あまりなじみのない言葉かもしれません。今回は細胞の「分化」について少しお話ししたいと思います。

いきなりですが、細胞の「分化」とは、それぞれの細胞がなにかしら役割を持つことを言います。たとえば、肝臓になる細胞は肝臓としての役割を果たすために、それにみあったかたちや機能を持たなくてはなりません。筋肉になる連中も、それにふさわしい能力を身につけなくてはならないのです。それぞれの細胞がこういった役割を持つようになったことを、「細胞が肝臓の細胞に分化した」とか、「筋肉の細胞に分化した」と言います。

細胞は「分裂」をくりかえすことで数を増やしていきます。さらに「分化」することで、それぞれが役割にみあう機能を身につけていくのです。皮膚の細胞に分化したり、神経の細胞に分化したり、骨の細胞に分化したり、血液の細胞に分化したり、それぞれの細胞たちは、自分の生き方を決めていきます。でも、まだ役割を決め切れてない細胞たちもいます。これを「未分化」な細胞と呼んだりします。「未分化」な細胞たちは分化する準備を着々と整えているのです。まるで、子供たちがじっくり勉強して、将来なりたいものを決めているようですね。

お母さんのおなかの中にある1つの細胞(受精卵)が、どんどん分裂してたくさんの細胞たちになっていきます。数が増えるにつれて、一部は分化を始めます。だんだんと皮膚のようになっていく連中や、心臓のような筋肉になっていきたい連中や、脳になっていきたい連中たちがおおざっぱに分かれていくのです。

皮膚のようになりたかった連中の一部は、やっぱり口の中の粘膜になりたくなるかもしれません。皮膚と口の粘膜は近い親戚みたいな関係です。胃や腸の粘膜もこれと親戚です。筋肉になりたかった連中の一部は、骨になったりするかもしれません。骨や筋肉や軟骨は親戚関係にあって、少しさかのぼると一緒の細胞にいきつきます。

こうして、細胞たちのまるで進化のような細かい選択によって、専門性を増した細胞の社会ができあがるのです。60兆個にもおよぶ専門集団である「からだ」ができあがるのです。本当にうまくできていますよね。