コラム・トピックス

2022年04月01日【再生医療★インサイド】

他人の細胞と自分の細胞どちらを選ぶか

畠社長

再生医療のお話をするにあたって、どうしても避けて通れない話題があります。
それは、再生医療の担い手として使用する細胞が患者さんご自身の細胞か、他の方の細胞を用いるかということです。これまでお話ししてきたように、再生医療は自分の細胞で治療ができることが大きなメリットです。しかしその一方で、ご自身の細胞を使った再生医療を実施するには、いわゆる究極のテイラーメイド型の治療になるために、とても高額になるといわれています。そこで、再生医療等製品として、あたかも医薬品のように流通するには大量生産によるコスト低減が不可欠ではないかと考えられてきました。そのため、患者さんご自身の細胞ではなく、他人の細胞をつかった再生医療のニーズが増してきたのです。

すでにお示ししましたが、患者さんご自身の細胞に変えて他の方の細胞を用いる場合、免疫拒絶の問題や、種々の感染症伝播の問題が生じます。とはいえ、初めに直面する問題は、どなたの細胞をつかって再生医療に供する製品を作るのかということです。患者さんへの使用を前提にした場合には、もちろん健康な方からいただかなくてはなりません。さらに大量に増やすためには、できる限り『活き』の良い細胞、すなわち若い方からいただくことが不可欠です。血液など、最低限の侵襲でいただくことができる細胞はよいのですが、手術などによって体の組織の一部をいただくことは容易ではありません。

以前、私たちが独自に実施したアンケートでは、再生医療の意義をよくご存じの方はご提供に前向きであること、採取にあたっての侵襲の程度で決めたいとの意向があること、などがあげられました。しかし、さらに深く伺ってみると、自分以外の家族の細胞のご提供や、製品として企業が販売することには一定の抵抗感があることも明らかになっています。

昨今、報道などで再生医療に関する話題が広くあつかわれ、その意義についてはご存じの方が増えています。経済産業省も、再生医療の発展に向けたヒト組織の取り扱いに関する支援を進めてくださっています。私たちも、再生医療の担い手の一人として、この他人の細胞を使った再生医療を正しく進めていくとともに、一般の方々により多くの信頼をいただかなくてはなりません。

昨年11月、私たちも他家培養表皮の臨床試験を開始しました。自家細胞にくわえて他家細胞の製品をつかって、やけどの患者さんにより適切に再生医療をお届けしたいと考えています。

2022年4月1日