自家培養軟骨とは

関節軟骨には血管が存在しないため、損傷を受けた場合の自己修復能力は極めて乏しいことが知られていますが、細胞培養技術の発達により、患者自身の軟骨細胞を体外で平面培養し、増やした軟骨細胞を懸濁液としてその患者に移植する方法(自家培養軟骨細胞移植法)が1994年にスウェーデンのBrittberg教授らによって行われました。

しかし、軟骨細胞は平面培養を行うと脱分化し、本来の形質を失って、産生する軟骨基質が変化することが知られています1)。また、損傷部位を骨膜で覆ったのち、その隙間から軟骨細胞を懸濁液の状態で注入することから、注入後に細胞が漏れやすいなどの問題点が指摘されていました。

この2つの問題点を解決するために、島根医科大学の越智光夫教授(現 広島大学整形外科教授)らは、軟骨細胞をアテロコラーゲンゲルに包埋し、三次元で培養する技術を開発し、1996年に倫理委員会の承認をうけて臨床研究を開始しました。この三次元自家培養軟骨の最大の特徴は、軟骨細胞が本来の形質を維持していることと、産生された軟骨基質を保持することです2)

この自家培養軟骨は、越智教授らによって、交通事故等に起因する外傷性軟骨欠損症や、激しいスポーツ等によって繰り返して関節面に加わる外力に起因する離断性骨軟骨炎の患者に適応されました3)

自家培養軟骨は軟骨欠損部に移植されコラーゲン膜で覆われますが、ゲル状であるため、軟骨細胞が漏出・脱落することなく移植部に留置されます。移植部では、移植された軟骨細胞がコラーゲンやプロテオグリカン等の軟骨基質を産生することによって、軟骨組織が形成され修復が進行すると推測されます(図1)

図1 自家培養軟骨移植によって想定される軟骨欠損の修復過程

自家培養軟骨は、構成成分としてウシ I 型コラーゲンから作られたアテロコラーゲンゲルを含んでいます。アテロコラーゲンの構造は動物種間でアミノ酸配列がよく保たれているため、ウシ I 型アテロコラーゲンをヒト生体内に移植した場合、代謝を受け次第に分解され消失すると考えられます。したがって、培養軟骨中のアテロコラーゲンゲルは、移植後徐々に分解され、培養軟骨中の軟骨細胞が産生するコラーゲンやプロテオグリカンに置き換わっていくと推察されます。

参考文献

  1. 1) von der Mark K, Gauss V, von der Mark H et al:Relationship between cell shape and type of collagen synthesised as chondrocytes lose their cartilage phenotype in culture. Nature 267:531-532(1977)
  2. 2) Uchio Y, Ochi M, Matsusaki M et al:Human chondrocyte proliferation and matrix synthesis cultured in Atelocollagen® gel. J Biomed Mater Res 50:138-143(2000)
  3. 3) Ochi M, Uchio Y, Kawasaki K et al:Transplantation of cartilage-like tissue made by tissue engineering in the treatment of cartilage defects of the knee. J Bone Joint Surg Br 84-B:571-578(2002)

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