自家培養角膜上皮とは

自家培養角膜上皮は、患者自身の角膜輪部組織から分離した細胞を培養して製造する角膜上皮細胞シートです。

イタリアのPellegrini教授ら及び大阪大学の西田教授より導入した技術をもとに製品化しました。Pellegrini教授らは、患者由来の角膜輪部組織から分離した角膜上皮細胞をフィブリンゲル製剤を足場として培養・作製した自家培養角膜上皮を、1997年に世界で初めて角膜上皮幹細胞疲弊症(Limbal Stem Cell Deficiency (LSCD))の患者さまに移植し、良好な結果を報告しました1)。そののち、イタリアでは臨床使用されています。

  1. 1) Pellegrini G, Traverso CE, Franzi AT et al:Long-term restoration of damaged corneal surfaces with autologous cultivated corneal epithelium. Lancet 349:990-993 (1997)

自家培養角膜上皮の移植フロー

角膜上皮の役割

ヒト眼球の表面は角膜と結膜から成り、角膜は透明で血管がなく、層構造を示します(図Ⅰ-1)。その最外層の角膜上皮は、角膜上皮細胞からなり、外界から細菌や化学物質の侵入を防ぎ角膜内層を保護する役割を有しています。角膜と結膜の境界である角膜輪部には角膜上皮幹細胞が存在し、角膜上皮細胞を供給するとともに結膜上皮細胞の侵入を阻み、角膜上皮の透明性を維持する重要な役割を担っています。

ヒト角膜の構造

角膜幹細胞疲弊症とは

通常、角膜が傷害され角膜上皮が失われると、角膜輪部から補給された角膜上皮細胞が増殖し、進展することによって速やかに治癒に至ります。しかしながら、熱傷・化学傷等により角膜輪部を含む広い領域の角膜上皮が失われると、周囲の結膜が侵入して角膜表面が結膜上皮細胞で覆われます。この結膜の侵入により、血管侵入と慢性的な炎症を伴う瘢痕状態となり、最終的に角膜上皮が混濁して視力が低下します。このような病態を総称してLSCDと呼びます。

LSCDに対する既存の治療法としては、患者自身(自家)又は他人(同種)の健常眼から採取した角膜輪部を、患眼に移植する角膜輪部移植があります。しかしながら、自家角膜輪部移植は、健常眼からの広範な角膜輪部(角膜輪部の約30〜40%)の採取が必要なため侵襲性が高く、また、同種角膜輪部移植は、長期的な免疫抑制が必要である上、ドナーも不足しています。また、LSCDに対して羊膜移植が行われる場合がありますが、角膜輪部移植に対する補足的な併用療法であり、患眼に角膜上皮幹細胞が残存している必要があります。このように、これまでは、LSCD患者に対する十分な既存の治療法は存在しませんでした。

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