コラム・トピックス

2021年12月13日【再生医療★インサイド】

1999年に再生医療という言葉が生まれました

再生医療★インサイド 
 

1999年、当時の小渕内閣が提唱するミレニアムプロジェクトというのをご存じですか?
このプロジェクトは新しいミレニアム(千年紀)の始まりを目前に控え、人類の直面する課題に応え、新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むものとして政府が提唱しました。再生医療はその中に掲げられた大胆な技術革新として登場したのです。バイオテクノロジーの領域としてはヒトゲノム(ヒトの遺伝子)やイネゲノム(イネの遺伝子)の解析を通じて、さまざまな技術革新を目指していました。その時に「再生医療」という言葉が登場したのです。
その当時の日本は「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」が成立したのですが、脳死下に臓器を提供する場合、本人の書面による意思表示と家族の承諾を必須とするなど厳格なルールがあり、臓器の提供者は増えませんでした。米国と比べ圧倒的に臓器移植の実施例が少ない日本は、この再生医療という内容に期待したのです。というのも、こうした臓器移植に代わるものとして、患者さんご本人の細胞を培養して、人工臓器を作ることを目指していたからです。肝臓や腎臓など複雑なものを作るのは容易ではありません。ミレニアムプロジェクトでは、骨や軟骨、血管、神経、皮膚や角膜、血液や骨髄などをつくろうとしていたのです。
自分の細胞を培養して移植に使うということは、これまでの臓器移植にないメリットがありそうですね。例えば、免疫拒絶を受けないために免疫抑制剤の力を借りる必要はありません。他人が持っている感染症の心配もありません。何しろ、他人の臓器や組織に頼ることなく、移植が可能になるのです。
あれから20年が過ぎ、先ほどミレニアムプロジェクトとして例に挙がった組織は実用化されはじめています。しかし、肝臓や腎臓など臓器の再生はいまだ半ばです。将来、本当に臓器移植の代わりになる医療ができるのか。バイオテクノロジーの目指す究極的な目標ですね。

2021年12月13日